キャンプの夜、揺らめく炎を眺める時間。その最高のひとときを演出する主役こそが「薪」です。 実は、焚き火がうまくいくか、失敗に終わるかの9割は、この薪選びにかかっていると言っても過言ではありません。
「針葉樹と広葉樹って、結局何が違うの?」 「お店で売ってる薪、どれを選べばいいんだろう?」 「一晩のキャンプで、薪ってどれくらい必要なの?」
この記事では、そんな薪に関するあらゆる疑問や悩みを、ファミリーキャンプもソロキャンプをする筆者の経験に基づいて、この記事一本で完全に解決します。 これを読めば、あなたはもう薪選びで迷うことはなくなり、焚き火を自由自在に楽しめる「薪マスター」になれるはずです。
【結論】針葉樹と広葉樹の違いが一目でわかる比較表
まずは結論から。焚き火で使う針葉樹と広葉樹の主な違いを、以下の比較表でご確認ください。
項目 | 針葉樹 (スギ、マツ、ヒノキなど) | 広葉樹 (ナラ、クヌギ、サクラなど) |
火付き | ◎(非常に良い) | △(悪い) |
火持ち | ×(悪い・すぐ燃え尽きる) | ◎(非常に良い) |
火力 | ◯(一気に燃え上がる) | ◯(安定して長時間続く) |
煙・煤 | 多い | 少ない |
香り | 樹種特有の強い香り | 控えめで甘い香り |
価格 | 安い | 高い |
得意な役割 | 着火、焚き付け | 長時間の焚き火、調理(熾火) |
硬さ・重さ | 柔らかく軽い (薪割りが楽) | 硬く重い (薪割りが大変) |
【深掘り解説】代表的な薪の種類と特徴
比較表で概要を掴んだら、次はそれぞれの代表的な樹種ごとの個性を見ていきましょう。
針葉樹薪:「着火のスペシャリスト」

油分を多く含み、密度が低いため、非常に燃えやすいのが特徴。焚き火のスタートダッシュに欠かせません。
- スギ: 最もポピュラーで安価。非常に火付きが良いですが、火の粉がパチパチと弾けやすいので注意が必要です。
- マツ: 火力が強く、独特の香りがします。ただし煤(スス)が多いため、調理器具が真っ黒になりやすいです。
- ヒノキ: 上品でリラックスできる香りが特徴。アロマ効果も期待できる人気の薪です。
広葉樹薪:「焚き火の主役」

密度が高く、火持ちが非常に良いのが特徴。火が安定してからは、この広葉樹がメインになります。
- ナラ(オーク): 火持ち・火力ともにバランスが良く「薪の王様」と呼ばれます。安定した熾火(おきび)は調理に最適。
- クヌギ: ナラと並ぶ最高品質の薪。火持ちはトップクラスで、BBQ用の高級木炭の原料にもなります。
- サクラ: 燃やすと甘くスモーキーな香りが立ち上り、燻製調理との相性も抜群。肉料理が一段と美味しくなります。
- カシ: 非常に硬く、火持ちは最強クラス。一度火がつけば、圧倒的な燃焼時間を誇ります。
針葉樹と広葉樹の3つの見分け方

お店で「針葉樹」「広葉樹」と表示があれば簡単ですが、「ミックス薪」や表示がない場合もあります。そんな時に役立つ、簡単な見分け方を伝授します。
- 【樹皮の見た目】で見分ける
- 針葉樹(スギなど): 樹皮が縦に長く裂けており、手で剥がしやすい。幹が真っ直ぐなものが多い。
- 広葉樹(ナラなど): 樹皮がゴツゴツ・ザラザラしており、まだら模様。幹が曲がっていたり、こぶがあったりする。
- 【持った時の重さ】で見分ける 同じくらいの太さ・長さの薪を両手で持ってみてください。ずっしりと重い方が広葉樹です。密度が全く違うので、驚くほど重さが違います。
- 【断面の年輪】で見分ける 針葉樹は成長が早いため年輪の幅が広く、広葉樹は目が詰まっています。これも大きな判断材料になります。
シーン別・薪の賢い使い方(火起こしから調理まで)
針葉樹と広葉樹の特性を理解したら、次は実践です。時系列で理想的な使い方をマスターしましょう。
①【着火時】針葉樹で確実に火を育てる


まずは細く割った針葉樹やフェザースティックで火種を作り、徐々に太い針葉樹へと火を移していきます。この段階で広葉樹を入れても、まず燃えません。
筆者のおすすめ:
正直、天候が悪い時や疲れている時は、無理せず文明の利器に頼るのが一番です。数ある着火剤の中でも、ライターで火をつけるだけで数分間燃え続けてくれる「文化たきつけ」は、初心者でも失敗しない最強の着火剤。私も必ず常備しています。
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②【安定期】広葉樹で長持ちさせる

針葉樹の炎が安定し、十分な熾火(おきび)ができたら、いよいよ主役の広葉樹を投入します。空気の通り道を塞がないように、ゆっくりと熾火の上に乗せるのがコツです。
③【調理】広葉樹の「熾火」が最高のコンロになる

広葉樹が燃え尽きる手前の、炎が収まり真っ赤になった「熾火」。これが最も安定した熱源となり、料理に最適です。肉を焼いたり、ダッチオーブンを置いたりするのに最高の状態です。
薪の準備と加工:もっと焚き火を楽しむために

薪をそのまま使うだけでなく、少し手を加えることで焚き火はさらに安全で楽しくなります。
安全のための必須装備「耐熱グローブ」
薪を扱う上で、火傷は最大のリスクです。軍手は熱で溶ける危険があるため絶対NG。必ず革製の専用グローブを使いましょう。
筆者の見解:
火傷をしてからでは楽しいキャンプが台無しです。私が5年間愛用しているのは、キャプテンスタッグの牛革グローブ。最初は硬いですが、使うほどに手に馴染む感覚は本革ならでは。まさに「育てる」グローブです。1,000円代なのに、しっかりしていて長く使えます。
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薪を割る道具「斧・ナタ」、細かい作業の相棒「ナイフ」

太すぎる広葉樹を割ったり、焚き付け用の細い薪を作ったり。薪を加工する道具があれば、火のコントロールが格段にしやすくなります。
筆者のおすすめ道具:
- 斧: 太い薪を豪快に割るなら斧が最適。私が愛用している「ハスクバーナの手斧」は、初心者にも扱いやすいサイズ感と、スウェーデン鋼の鋭い切れ味が魅力です。
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- ナイフ: 細かい薪割り(バトニング)や、着火剤代わりのフェザースティック作りにはナイフが便利。定番の「モーラナイフ」は、1本持っておいて絶対に損はありません。
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もう迷わない!キャンプの薪の必要量と「良い薪」の選び方

薪の必要量の目安
季節や焚き火のスタイルで大きく変わりますが、一般的な目安は以下の通りです。
- 秋の夜に4〜5時間、鑑賞メインで楽しむ場合:
- 針葉樹1束 + 広葉樹1束(合計 約10〜15kg)
- 調理もガッツリ行い、長時間焚き火をする場合:
- 針葉樹1束 + 広葉樹2束以上
最初は多めに持っていき、自分のスタイルでどれくらい消費するのかを把握するのがおすすめです。
お店で「良い薪」を選ぶ3つのチェックポイント
- 十分に乾燥しているか: 薪同士を叩き合わせ、「カーン!」と高く澄んだ音がすれば乾燥している証拠。「ゴン…」と鈍い音がする薪は湿気っています。
- ずっしりと重いか(広葉樹の場合): 同じサイズなら、重い方が密度が高く、火持ちが良い薪です。
- 樹皮が剥がれかけていないか: 樹皮が自然に剥がれかかっているものは、よく乾燥しているサインです。
筆者のアドバイス:
もし近所のホームセンターで質の良い薪が手に入らない場合は、通販で高品質な薪を購入するのも賢い選択です。特に薪専門店やアウトドアブランドの「乾燥薪」は、火付きも火持ちも全く違います。針葉樹と広葉樹がセットになった「お試しセット」から始めてみるのもおすすめですよ。リンクリンク
▶︎あったら焚き火がより楽しくなる焚き火グッズを紹介

炎を自在に操る!焚き火の基本的な薪の組み方3選
薪の組み方一つで、炎の形や燃焼効率は大きく変わります。代表的な3つの組み方を覚えましょう。
- 【井桁(いげた)型】
薪を「井」の字に組んでいく方法。中心に空間ができ、空気の通りが非常に良いため、安定して力強く燃えます。焚き火の基本形です。 - 【合掌(がっしょう)型】
薪を円錐状に立てかける組み方。中心に熱がこもり、高く美しい炎が立ち上ります。着火時に最適です。 - 【並列型】
薪を平行に並べる組み方。ゆっくりと燃え広がり、熾火を作りやすいのが特徴。調理や、寝る前に火を長持ちさせたい時に向いています。
焚き火の薪 よくある悩みQ&A

Q. 広葉樹の薪がうまく燃えません。どうすればいいですか?
A. 最も多い悩みです。原因は「熾火不足」と「空気不足」がほとんど。まずは細い針葉樹で十分な量の真っ赤な熾火を作り、その上に空気の通り道を塞がないように、少し隙間をあけて広葉樹を置いてみてください。焦りは禁物です。
Q. 湿気ってしまった薪はもう使えませんか?
A. 使えます。焚き火の熱を利用して、火の周りに湿気った薪を並べて強制的に乾燥させましょう。直接火に入れるのではなく、熱で温めて水分を飛ばすイメージです。ただし、煙が多く出ることは覚悟してください。
Q. 安全な後片付けの方法は?
A. 燃え残った炭や灰は、水をかけて消火すると完全に消えたか分かりにくく危険です。蓋をして酸欠消火できる「火消し壺」を使うのが最も安全で確実です。消し炭は次回の着火剤としても再利用できますよ。
もし、この記事に掲載されていないことについて知りたい、ご自身のキャンプスタイルに最適な薪選びでさらに具体的なアドバイスが欲しい、といった場合は、お気軽に「お問い合わせフォーム」からご質問をお寄せください。筆者のキャンプ経験や知識を活かして、できる限りお答えさせていただきます。
【次のステップへ】最高の薪には、最高の舞台を

最高の薪を手に入れ、その使い方をマスターしたら、次はその薪のポテンシャルを最大限に引き出す「焚き火台」選びも重要になります。 薪の組みやすさ、燃焼効率、調理のしやすさなど、焚き火台によって焚き火の体験は大きく変わります。以下の記事では、私が5年間愛用している焚き火台や、ファミリーにおすすめのモデルを徹底解説していますので、ぜひ合わせてご覧ください。
▶︎【徹底レビュー】ユニフレーム ファイアグリルの魅力を再評価!

▶︎【2025年最新】ファミリーにおすすめ焚き火台10選を紹介

▶︎七輪でも焚火ができることを知ってますか?下記の記事で紹介

まとめ:針葉樹と広葉樹を使い分け、焚き火マスターに!
焚き火は、ただ火を燃やすだけの行為ではありません。薪の個性を見極め、その日の気候や目的に合わせて使い方を工夫する、奥深い楽しみがあります。
この記事で解説した、
- 針葉樹と広葉樹の違いと見分け方
- シーンに合わせた使い方と必要量
- 炎を操る薪の組み方
これらをマスターすれば、あなたの焚き火はこれまでとは比べ物にならないほど、充実した豊かな時間になるはずです。 さあ、薪を使いこなし、最高の焚き火体験を楽しんでください!